「足で稼ぐ」営業と「地域特性」を活かした戦略。いわき市が実践する食品ロス削減の最前線

福島県内で4番目の導入ながら、急速に登録店舗数・ユーザー数を伸ばし、東北エリアでもトップクラスの利用実績を誇るいわき市。 なぜこれほどまでに地域に浸透したのか。その裏側には、徹底した「ターゲット選定」と「ローラー作戦」、そして地域の風土を読み解いた緻密な戦略がありました。資源循環推進課の原野様、佐久間様にお話を伺いました。

タベスケ導入を検討されたきっかけや、抱えていた課題を教えてください。
いわき市では「いわき市一般廃棄物処理基本計画」において「ごみゼロいわき」を掲げ、ごみ減量や食品ロス削減を主要施策としていました 。 ただ、これまではごみ処理施設の整備など「ハード面」に主眼が置かれがちで、市民への啓発などの「ソフト事業」はあまり手がけられていなかったのが実情でした 。そこで昨年、課の名称を「ごみ減量推進課」から「資源循環推進課」へ、係名も「3R推進係」へと変更し、組織としての意識改革を行いました 。まずはフードドライブ支援事業から始め、さらなる発展として「タベスケ」の導入を決定しました 。
いわき市のフードドライブ支援事業
いわき市のフードドライブ支援事業
数あるサービスの中で、タベスケを選んだ決め手は何でしたか?
大きく3つの理由がありました。 1つ目は、「協力店の負担が圧倒的に少ない」こと。登録料や販売手数料がかからず、配送の手間もないため、お店側に「金銭的・労務的負担」をかけずに提案できる点が魅力でした 。2つ目は、「デジタル初心者への優しさ」です。クレジットカード登録が不要で、予約して店頭で支払うだけのシンプルな仕組みは、幅広い世代への導入ハードルを下げると判断しました 。そして3つ目は、「いわきの風土への合致」です。いわき市は車社会なので、店舗への引き取りが苦になりにくい。また、市民の皆様の「お得に購入できること」への関心も高く、そこに「食品ロス削減」という社会貢献が加わる仕組みが、地域性にマッチしたのだと考えています 。
導入にあたり、店舗開拓で独自の工夫をされたそうですね。
はい、初動の営業活動にはかなり力を入れました。 まず、保健所が公開している食品営業許可施設データから、タベスケと親和性の高い業種の施設約1,890件のうち、273施設を抽出しました。そして、市内をエリアごとにリスト化し、職員3名で「10日間集中」して飛び込み営業を行うローラー作戦を展開しました 。1日あたり9件ペースで回り、直接対面で熱意を伝えました 。営業の際は、「必ずしも大幅な値引きや毎日の出品は必要ない」とご説明し、心理的なハードルを下げる工夫もしました 。例えば、「他の商品とのセット販売」や「次回使えるサービス券付き」など、お店が損をしない形での出品も可能であることを伝え、参画を促しました 。
ユーザーへの周知はどのように行いましたか?
タベスケのメインユーザー層である30〜50代にリーチするため、「学校」を通じたアプローチを行いました 。 市内の全小中学校の児童生徒(約3万8,000人)を通じてチラシを配布し、親御さんの手元に確実に届くルートを活用しました 。また、チラシのデザインも行政特有の堅苦しいものではなく、「これ何だろう?」と手に取ってもらえるようなデザイン性を意識し、QRコードへの誘導を図りました 。
いわきタベスケ配布用チラシ
いわきタベスケ配布用チラシ
いわきタベスケ協力店用POP
いわきタベスケ協力店用POP
実際に導入してみて、どのような成果や反響がありましたか?
導入から半年足らずで協力店は51店舗、ユーザー数は4,600人を突破しました(取材当時)。 店舗様からは「これまで値引き販売はブランド価値を下げる懸念があったが、『食品ロス削減』のためSDGsに取り組む姿勢を持つ企業として、ポジティブに販売できるようになった」という声をいただいています。また、通販とは違い対面での引き渡しとなるため、トラブルが少なく、顔の見える関係性が築けている点も評価されています 。
今後の展望や、さらに目指していきたいことを教えてください。
今後はさらに協力店を増やし、ユーザーにとっての「購入の選択肢」を広げていきたいと考えています 。 お店とユーザーの相乗効果で好循環を生み出し、食品ロス削減量を増やすことで、「事業費に対してこれだけの成果が出ている」と市民の皆様に示せるよう、引き続きPRと利用促進に力を入れていきます 。また、本市に居住していない方でも、タベスケに登録していればサービスを利用することができる広域連携のメリットを活かして、近隣市町村居住者の登録・利用の拡大や、旅行先でタベスケを使ってもらう「自治体をまたいだ利用」などタベスケの可能性を広げる取組みについて検討していきたいですね。

「まずはターゲットを絞り、足を使って直接伝えに行く」。デジタルサービスの導入でありながら、いわき市様がとった手法は非常に泥臭く、しかし最も効果的な「対面営業」でした。 担当者様の熱意と、地域特性を冷静に分析した戦略が噛み合ったからこそ、短期間での垂直立ち上げに成功したのだと感じました。この度はお忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。

※本記事はインタビューの内容をもとに再編集して掲載しております。

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