防災備蓄は多くの人が意識するものですが、ローリングストックをしている場合、「継続が難しい」と感じるかもしれません。その際には長期保存食の活用がおすすめです。
この記事では、ローリングストックの概要や長期保存食の備蓄方法などについて詳しく解説します。
昨今の災害や災害時に困る食事について
地震、台風、豪雨など多くの災害に見舞われる日本。地理的に災害が起こりやすいことは確かであり、歴史上も現代も相当数の災害に直面しています。
災害時には日常生活と同じ生活を送ることは難しく、とくに健康や生命に直結する食事に関して困るケースも少なくありません。
昨今発生する災害について
歴史上、日本は数多くの災害に遭ってきました。約30年を振り返るだけでもマグニチュード7を超える大震災、死者が出る規模の台風や豪雨に何度も直面しています。2024年1月には能登半島でも大きな地震があり、多数の死者や被害が出たことは記憶に新しいところです。
今後も南海トラフや首都直下地震などが起こる可能性もあるため、災害への備えは必須だといえます。
被害に見舞われた地域には国内外から支援が寄せられますが、すぐに日常と同様の生活をすることは到底できません。とくに支援体制が整うまでの数日は水や食料、燃料など、健康を保つために必須の物資が極度に不足するケースもあります。
いつ災害が起こるか分からない日本では、支援が行き渡るまで自治体や個人の備蓄品を活用することを日頃から想定しておく必要があるでしょう。
災害時に困った食事
生きるためにはどのようなときでも食事が必要です。しかし災害時には食事面で多くの問題が生まれます。東日本大震災で被災した人の体験談によると、被災時の食について以下のような困りごとがあったとのことでした。
・寒い時期の被災でライフラインがストップし、ガスや電気が使えないため温かいものが食べられなかった
・生ごみ の処理に困った
・水不足で調理や調理器具の洗浄に困った
参考:アマノフーズ
東日本大震災に限らず、被災地ではライフラインの途絶やそれにともなう環境維持の困難、水不足は高確率で起こり得る問題です。食事面だけを見てもこれだけの困りごとが起こります。
ローリングストックについて
近年、災害に備えて食料や日用品などを備蓄する方法のひとつとして「ローリングストック」が注目されています。日頃から無理なく災害備蓄品を用意するために取り入れやすい手段として知られ、実際に心がけている人も多い方法です。
ローリングストックとは何か
ローリングストックとは日常的に食べる食品を多めに買って取り置いておき、使うたびに使った分を新しく補充する(買い足す)備蓄方法です。
常時一定量を備蓄しておけることになるため、災害時にも非常食だけで過ごす必要がなく、栄養価や精神面で大きなサポート効果が得られる一面があります。
備蓄するものは家庭によって異なりますが、普段から食べているインスタント食品や缶詰、レトルト食品などが多い傾向です。
「食べながら備える」という形になるため、非常食と比較すると賞味期限が短いレトルト食品も備蓄品に入れられます。
種類が限られた非常食よりも好みのレトルト食品を非常時に食べられることは、健康維持だけではなく精神的な支えにもなるでしょう。
ローリングストックのメリットとデメリット
ローリングストックのメリットとデメリットについて見てみましょう。
【メリット】
・古いものから食べるため、賞味期限切れが起きにくく、無駄にならない
・期限切れを極端に気にしなくてよいため、多種類のものや好みのものを備えられる
・災害時に普段から食べているものを食べられて精神的な助けになる
【デメリット】
・種類によっては調理器具や水、電気が必要になる
・普段あまりレトルト食品や缶詰など(保存性の高いもの)を食べない人にとってはつらく感じる可能性がある
・保管場所が必要になり生活空間を圧迫する可能性がある
常時新しいものに入れ替わるため、賞味期限切れが起こりにくいことは大きなメリットです。また、災害時には非日常のなかでストレスが溜まりますが、そんなときに普段から慣れた味の料理が食べられれば心も安まるでしょう。
一方、ライフラインが途絶された環境になれば水や電気が使えなくなり、調理が難しくなる一面はデメリットでしょう。食生活によっては好みの味ではなかったりすることや保管場所が必要になったりすることも考える必要があります。
ローリングストックをやめたという人の声
ローリングストックが提唱された頃に取り入れてみたという人のなかには、さまざまな事情でローリングストックをやめたという声もあります。
ローリングストックは常時消費と買い足しを繰り返す方法です。消費したら近日中の買い物で購入しなければならず、消費量の管理や買い足しそのものが大変だという人もいました。
確かに誰もが常時食料の消費量を詳しく把握したり、買い足しのために買い物へ行けたりするわけではありません。買い物のときもほかの購入品があり、買い足し分の荷物が持てないということもあるでしょう。
ローリングストックは便利な方法ですが、ライフスタイルによっては続けることが難しいと感じる人がいるのも確かです。
ローリングストック以外の備蓄の方法
ローリングストックが難しい場合はほかの備蓄方法を考えましょう。たとえば長期的な保存食をそろえ、場所を決めて保管しておく方法があります。
日本の市場では長期保存が可能な備蓄食品が数多く取り扱われています。長期保存可能とうたっているなかでは最低でも5年ほどの賞味期限になっているものが多く、一度そろえれば5年間備蓄の心配がありません。
最近は5年に限らず、7年、10年、25年というさらに長い年月で保存できる製品も増えています。それでいて味気ない非常食ではなく、味も食感も研究されておいしさが改善されており、災害時に感じがちな食のストレスを軽減することもできます。
ローリングストックが自分に合わずほかの備蓄方法を探しているのなら、長期保存できる備蓄食品の導入を考えてみてはいかがでしょうか。
属性別3日の備蓄食品
長期保存できる備蓄食品において、最低限ストックしておきたい世帯構成別の量は以下になります。日数の目安は3日として仮定しました。用意する際の参考にしてください。
1:単身者(成人1名で試算)
・水9L(2Lペットボトル4~5本)
・レトルトご飯9食
・レトルト食品3個
・缶詰3缶
・野菜ジュース3本
・乾麺、即席麺3パック
2:4人家族(成人2名、中学生1名、小学生1名で試算)
・水35L(2Lペットボトル17~18本)
・レトルトご飯35食
・レトルト食品12個
・缶詰12缶
・野菜ジュース12本
・乾麺、即席麺3パック
その他、無洗米やお菓子、飲み物、果物の缶詰など
参考:東京備蓄ナビより
水と米のほか、タンパク質やビタミン類を摂取できる食品も備蓄しておきましょう。市場で多数の種類が選べるため、好みの味を探してください。具材が入った炊き込みご飯や具だくさんのフリーズドライ味噌汁などもあります。
気分を落ち着かせたり手軽にエネルギー補給ができたりする甘味(チョコレート、羊羹、ビスケット類)なども備蓄をおすすめします。甘味類も長期保存できるタイプが多数販売されているため、ぜひ備蓄リストに加えてください。
防災備蓄食品の確認と管理方法
長期間保存できる防災備蓄食品でもいずれは期限切れが訪れます。チェック方法や選び方などの注意点、期限までに食べ切れそうもない備蓄食品を無駄にしない方法などについて紹介します。
期限切れチェックの方法
期限切れを起こした食品は一般的なものでも備蓄食品でも食べられません。健康被害を避けるために定期的なチェックをおこないましょう。
製品には必ず消費期限や賞味期限が刻印されています。年に数回確認し、期限が近いものは日常の食事で食べれば無駄になりません。「災害時に食べる料理の味」を覚え、慣れる効果もあります。
備蓄場所の選び方と注意点
最低限だけの備蓄食品でも量が多くなり、部屋を圧迫してしまいがちです。1か所に置けるスペースの確保が難しければ「水はここ、食料はここ」など分散させておきましょう。
可能であれば置く場所にも気を配りましょう。災害時にすぐ取り出せる場所であること、地震の揺れで落下しない場所がおすすめです。
備蓄アイテムの定期的な点検と補充方法
備蓄食品に限らず、非常時を想定した備蓄アイテムは定期的な点検が必要です。「食品以外なら気にしなくてもよさそう」と思うかもしれませんが、実際は経年劣化を起こすものもあります。
たとえば乾電池は経年劣化で未開封でも電力が減り、場合によっては液漏れを起こすこともあります。いざというときに使えない事態になりかねません。
カセットコンロ本体やカセットボンベ(ガスボンベ)も必ず定期的に確認しましょう。カセットコンロ本体は約10年で劣化し、ガス漏れの危険が生じます。カセットボンベの寿命はそれより短く6~7年です。
点検時に期限切れが近いものがあれば新しいものに交換しましょう。まだ食べられる食品は食べ、カセットコンロ類は自治体の規定にしたがって廃棄します。
長期保存や長期使用できる備蓄アイテムは、使用期限が過ぎる頃には新しく使い勝手のよい製品が出ている可能性があります。以前と同じものだけを購入するのではなく、性能が上がった新しいものもチェックして購入・補充を決めてください。
フードドライブという選択肢
「消費期限や賞味期限が近いけれど自分では食べ切れそうもない、でも捨てるのはもったいない」 。そんな備蓄食品があればフードドライブの利用をおすすめします。
フードドライブは家庭で不要になった食品を寄付し、必要な人に渡す活動です。食品ロスの解消と必要な人へのサポートを同時におこなえるため、もし該当する食品があればお近くのフードドライブを利用してみてはいかがでしょうか。
ただし寄付できる食品は期限切れになっていないもの、未開封のものなど一定の条件があります。寄付する前に確認して、寄付する人も渡される人も気持ちよく使えるように心がけましょう。お近くのスーパーやコンビニ、自治体が行っていることがありますので、是非調べてみてください。