ごみ有料化実施率は年々増加しており、2024年10月時点では約66%*が有料化していますが、「ごみの有料化を実施したら不法投棄が増えるのではないか。」市民の方も自治体市職員の方も懸念のひとつとして感じているのではないでしょうか。
今回の記事では、ごみの有料化を実施したら本当に不法投棄が増えるのか。どのくらい増えているのか。不法投棄対策や事例も合わせて分かりやすく紹介します。
*参考:ごみ減量資料室代表・東洋大学名誉教授山谷 修作「全国市区町村の家庭ごみ有料化実施状況 (2024年10月現在)」
不法投棄とは
不法投棄とは、ごみを適正に処理をせずに山林や海岸や空き地・公園等みだりに捨てることをいいます。小さなごみであれば「ポイ捨て」と言いますが、これも「不法投棄」のひとつです。
法律でも禁止されており、不法投棄を行った人は法律によって罰せられてしまいます。
「廃棄物の処理および清掃に関する法律」
個人の場合は5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方。
法人の場合は3億円以下の罰金
ごみ有料化をしたことによって不法投棄が増加した自治体の割合
自治体が有料化をする際に住民アンケートをすると「不法投棄」の懸念を挙げることが多いです。実際有料化実施した自治体は不法投棄が増加したのでしょうか。
東洋大学山谷 修作教授実施「第3回全国都市家庭ごみ有料化アンケート調査(2008年2~3月)」によると有料化導入前後で不法投棄が「増加した」と「増加しなかった」の回答比率はほぼ同率という結果でした。ただし、有料化直後に不法投棄が増加したとしてもおよそ半数の自治体が2年以内に有料化実施以前の水準まで不法投棄を減少することができた。という結果*になっています。
*参考:東洋大学経済学部山谷修作教授「家庭ごみ有料化の取組みと今後の課題」
また、京都府立大学山川肇教授『都市廃棄物処理における有料化施策の影響と評価』論文によると、不法投棄に関する課題になっている自治体は、導入前より不法投棄が問題になっている自治体がほとんどだといいます。今まで不法投棄が問題になっていなかったのに有料化を導入したことにより不法投棄が問題になってしまったという事例はほとんどないようです。
分析を指定袋・シール以外は収集しない自治体に限定して行ったところ、不法投棄が問題となっていたのはほとんどが有料化以前から不法投棄が問題となっていた自治体であることがわかった。このことから、有料化はもともと不法投棄の問題が起こっていない地域に新たに不法投棄問題を引き起こすようなことはほとんどないことが明らかとなった。
引用元:京都府立大学山川肇教授,「都市廃棄物処理における有料化施策の影響と評価」, 第8章 有料化自治体における不法投棄の状況とその影響要因, https://www2.kpu.ac.jp/life_environ/mat_cycle_soc/lit/ch8.pdf ,2024年10月10日最終アクセス
有料化を検討している自治体は、現在の不法投棄の状況を把握し、導入後には現状よりも効果的な対策がないかを検討していくと良いかもしれません。
ごみ有料化を行ったことによる減量事例
ごみ有料化をすでに実施している自治体の多くが、減量効果がでています。その中でいくつか事例をご紹介します。
■神奈川県藤沢市
・導入:2007年
藤沢市では、有料化実施前の2006年と3年後の2009年では可燃ごみ(総量)が14.7%減少しており、さらに不法投棄も減量しました。
参考:藤沢市「ごみ処理有料化3年経過後の効果」
■大阪市熊取町
導入:2009年
熊取町では、導入後減少傾向となり、横ばいの時期もありましたが、2023年には有料化前と比べて家庭可燃ごみを28.8%減量することができました。
参考:熊取町「家庭可燃ごみが約2,443トン減量!」
■長野県岡谷市
導入:2009年
岡谷市では、有料化前の2008年度と導入後の2009年度では約33%の減量を成功。さらに導入年度から10年後も減量効果がでています。
参考:岡谷市「令和2年度 家庭ごみ有料化の検証結果について」
自治体の不法投棄対策
不法投棄を対策する上で、不法投棄されたごみの撤去対応を行うことはもちろんですが、不法投棄されやすい場所をしっかりと管理していくことも大切です。不法投棄されやすい場所としては「車両侵入防止策等」や「処罰・呼びかけの看板」「プランター・花壇」が挙げられるでしょう。地域によっては人目がつきにくい河川、雑草や雑木が生い茂っていて管理されていない土地も不法投棄される可能性があります。
各自治体が行っている対策を一部紹介します。
■監視パトロール
■人感ライト・人感スピーカー
■監視カメラ(ダミー含む)及び看板の設置
■住民参加型撤去活動
■民間協力通報網整備
上記以外にも、八王子市などいくつかの自治体では「集合住宅ごみ等優良排出管理認定制度」*を設けています。ごみ・資源物の適正排出および集積所を適正管理している場合「認定」を受けることで、一時的にごみ・資源物を仮置きし共同利用することができます。
これを行うことで不法投棄の対策やごみ減量・環境美化の意識を高めることもできます。
また、全国一律としては終了しましたが、5月30日(ごみゼロの日)から6月5日(環境の日)までは「ごみ不法投棄監視ウィーク」となっており、各自治体で市民や子どもたちによるパトロールやスカイパトロール、啓蒙活動を行っている自治体もあります。
*参考:八王子市 集合住宅ごみ等優良排出管理認定制度
G-Placeのごみ有料化トータルサービスについて
創業より50年以上にわたり株式会社G-Placeは、自治体のごみ有料化のサポートを行っております。ごみ有料化の実務は、以下の業務に大別できます。
①指定袋等の製造
②在庫の適正保管
③取扱店からの注文受付
④取扱店への流通手配
⑤取扱店から手数料の収納
⑥流通や代金徴収の管理システムの構築・運用
これらの繁雑な有料化委業務を一括委託により簡略化することが可能です。
有料化のための専用システムもご用意しております。手数料収納ソフト「楽楽出納」、指定ごみ袋取扱店からの注文受付、配送指示、納品報告、在庫管理ができるシステムをWebで提供する「ごみ袋流通支援サービス マートビューア」などがございます。
ごみ有料化を検討していたり、ごみ有料化するかどうか検討材料がほしい場合や、導入が決まったけどどこから決めていくべきか相談したい場合など、ごみ有料化に関する疑問・要望がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
【参考】
・環境省「一般廃棄物処理有料化の手引き令和4年3月」
・公共経済学教材「第13回情報流通円滑化によるごみ処理適正化不法投棄・不適正排出対策」
・ごみ減量資料室代表・東洋大学名誉教授 山谷 修作「手数料水準と家庭系処分ごみ排出量の減量効果」
・環境省 「令和元年度全国ごみ不法投棄監視ウィーク等における取組について」