ここ最近よく耳にする生成AIやChatGPT。
ChatGPTとチャットボットはどちらも幅広い問題解決や疑問解消に貢献する優れた技術です。ただ、双方に似通った点があるため、詳細な違いを把握したうえで活用する必要があります。
本記事では、ChatGPTとチャットボットの違いや自治体における活用事例、活用法などについて詳しく解説します。
地方自治体におけるAI導入状況
総務省が発表した自治体におけるAI・RPA活用促進では、AIを導入している自治体は都道府県・指定都市では令和3年度以降全自治体が導入しているという回答でした。その他の市区町村でも年々増加傾向にあり、自治体がAI活用が確実に進んでいるのがわかります。
その中でも「チャットボットによる応答」に注目すると年々増加傾向になっており、令和5年度では約370の自治体が導入していることが分かります。そんなチャットボットについてや生成AI(ChatGPT)について解説していきます。
ChatGPTとチャットボットの基本的な違い
ChatGPTとチャットボットは似ている印象を持たれがちかもしれませんが、実際には基本的な部分に違いがあります。それぞれの違いを詳しく見てみましょう。
ChatGPTとは
ChatGPTとは、2022年11月にOpenAIが開発・リリースした大規模言語モデル(LLM)の一つです。大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)とは、大量のテキストデータを使ってトレーニングされた自然言語処理モデルのことを指します。
さまざまな用途に利用が可能で、質問への回答、文章の校正・要約、アイディアの提案など、幅広いサポートができます。
ChatGPTが大きく注目されていますが、LLMは他にも存在しています。
(Gemini(ジェミニ) /Google BLOOM(ブルーム)/BigScience LlaMA(ラマ)/Metaなど)
ChatGPTが返答する際の情報は、Webサイトから収集された大量のテキストデータから学習をして質問の文脈を理解し、自然な文章を生成して回答します。広範囲のジャンルの情報を網羅し、ユーザーのあらゆる質問や要求に応じられるよう構成されたAIです。
ChatGPTは広義ではチャットボットの一種になりますが、その自然言語処理能力はより高度であり、まるで人間のように柔軟な応答が可能になっています。
しかし、学習データが主にWebサイトから収集されるため、不正確な情報も学習してしまいます。
ChatGPTの注意点「ハルシネーション」について
質問に対するChatGPTの回答内容は必ずしも正しいとは限りません。時には誤った回答や不適切な回答をする場合があります。
そしてChatGPTは最もらしい文面で回答をしてくるため、情報が正しいのか間違っているのか判断をすることが難しいケースがあります。
こういった現象を「ハルシネーション」といい現時点ではハルシネーションを完全に抑制することは難しいといわれています。
ChatGPTのような生成AIは検索エンジンではない。情報の正確性を意識しながら利用する必要ということを理解して活用することが必要です。
チャットボットとは
チャットボットは1966年にアメリカで開発された「ELIZA(イライザ)」が最初のものとされています。日本語では「自動会話プログラム」と訳されることが多いようです。
チャットボットはChatGPTと異なり、事前にプログラムされた回答のみを提供します。
事前のプログラム範囲内のみでの回答になるため、柔軟性に欠ける点はありますが、必要な情報に対して信頼性・正確性の高い回答を返せるという特徴が大きな強みです。
たとえば、企業サイトで見かける「よくある質問」などのコンテンツではチャットボットが使われていることもあります。
チャットボットならではの事前プログラムにより、あらかじめ想定した質問と回答を登録しておけるため、多くのユーザーが共通して質問する事項に対し、高い精度で回答できるからです。
特定の分野において正確で迅速な情報提供が求められる際に重宝するでしょう。
自治体におけるChatGPTの活用方法
いくつかの自治体ではChatGPTを業務に導入し、活用しています。ChatGPTの利点と具体的な活用事例について見てみましょう。
ChatGPTの利点とは
ChatGPTの導入により、これまで手動で行っていた一部の業務を自動化できるようになります。
たとえば、資料作成や文章の添削、資料の要約、企画立案といった多岐にわたる作業を任して庁内活用を行えば、職員が担っていたリソースをほかの業務に回せるでしょう。
業務効率化はもちろんのこと、ストレス軽減やワークライフバランスへの貢献も期待できるでしょう。
ChatGPTの具体的な活用事例
すでにChatGPTを導入し、活用を進めている自治体の例について見てみましょう。
【神奈川県横須賀市】
2023年5月、神奈川県横須賀市の市役所でChatGPTの全庁的な活用実証がスタートしました。専用のビジネスチャットツールにChatGPTの機能を連携させるという内容です。
ChatGPTならではの機能の活用で業務効率化が期待できることに加え、職員が普段から使用しているツールにChatGPTの機能を搭載することにより、導入への抵抗感や利用へのハードルを解消できる利点もあります。
もともと横須賀市は積極的にテクノロジーを導入し、業務効率化や効果的な運用を意識している自治体です。ChatGPTの活用もその一環だと言えるでしょう。
【石川県野々市市】
業務効率化に向けて2023年10月にChatGPTを導入した石川県野々市市では、2023年9月、ChatGPTについて職員研修を実施しています。
外部企業から講師を招き、ChatGPTの優れた機能を学ぶとともに、情報の精査や個人情報の取り扱いなどに注意するべきであるという、運用面で重視されるべきことについて学びました。
自治体におけるチャットボットの活用方法
チャットボットを導入し、活用している自治体もあります。利点や具体的な活用事例について見てみましょう。
チャットボットの利点とは
自治体がチャットボットを導入する利点はいくつかありますが、まず「AIのなかでも導入しやすい」というものが挙げられます。
チャットボットはすでに幅広い分野で活用されています。自治体が使いやすいように構成したサービスもすでに商用化されているため、コストを抑えながら導入できるでしょう。
なかには数カ国語に対応するチャットボットサービスもあります。日本語以外の言語に対応できることは、日本語に不慣れな外国人の安心感や満足度を高める利点につながります。
また、正確な回答をプログラムしておけるため、市民の多くが知りたいと感じる「よくある質問」のような項目をあらかじめ用意しておけることも大きな利点になるでしょう。
職員が電話対応する前段階にこのような回答ができるチャットボットを設置しておけば、業務効率化や人的コストの削減も実現します。
24時間いつでも対応できることも重要な要素です。市民は電話をかける時間を気にしたり、メールの返信を待ったりする負担がなくなるのはもちろんのこと、自治体に電話をするハードルが高いと感じる層にもサポートすることができ、より市民満足度向上にも役立ちます。
チャットボットの具体的な活用事例
チャットボットはすでに全国の自治体で数多く導入・活用されています。具体的な例を見てみましょう。
【富山県】
富山県では子育てWebサイト「とみいくフレフレ」にチャットボットを設置しています。富山県下の複数自治体に関するFAQに答えられるよう登録されており「自治体名 聞きたいこと」を入力すれば自治体ごとの回答が得られるようになっています。
【東京都港区】
東京都港区では、公式ホームページにチャットボットを設置し、区に寄せられる「よくある質問」の回答へ活用しています。生活や各種手続きの方法、健康・福祉情報、子ども・家庭・教育、防災など、幅広い範囲で回答可能です。
地域住民の疑問を素早く解決できるようになっているほか、多言語対応のため、情報から取り残される住民を減らせることも大きな利点でしょう。
【京都府南山城村】
京都府南山城村では、チャットボット「御用聞きAI」を導入しています。先にご紹介した港区と同じく、「よくある質問」に対応しやすいようにプログラムされていますが、地域住民の特性にマッチさせたユーザーインターフェースと操作性が特徴的です。
南山城村の住民は高齢者が多く、ほかの世代と比較するとデジタルデバイドが懸念されています。しかし、ユーザーインターフェースや操作性を工夫することによって、高齢者でも使いやすく、手軽に活用できるチャットボットが誕生しました。
ChatGPTとチャットボットの比較・選定のポイント
自治体がChatGPTとチャットボットの導入を比較・選定する際には、以下の比較ポイントに注目するとよいでしょう。
1:柔軟性と正確性
ChatGPTは柔軟な回答が可能ですが、データの収集に頼っているため、正確性は限定的です。
チャットボットはあらかじめプログラムされたデータに基づいており、正確な回答が期待できますが、プログラムしていないことに関して聞かれた場合は答えることができません。
2:データ収集と情報登録
ChatGPTは大量のwebデータから学習するため、リアルタイムでのデータ収集・学習が得意です。しかし、収集するデータは必ずしも正確とは言いにくいこともあるため、信頼性やデータの品質に注意しなくてはいけません。
チャットボットはあらかじめ登録されたデータが基本情報です。リソースを使って情報を登録でき、正確性を重視する場合に適しています。ただし、新しい情報に関しては学習できないため、運用のメンテナンスが必要になってきます。チャットボットを選ぶ際は、運用面もメンテナンスしやすいかどうか確認することをおすすめします。
3:使いやすいインターフェース
市民が使いやすいインターフェースや操作性が求められます。地域のニーズや住民の特性を考慮しましょう。
4:予算との兼ね合い
ChatGPTやチャットボットの導入には財源が必要です。求める機能と予算のバランスを考え、可能な範囲での導入を進めましょう。自治体におけるAIの導入・活用では、国が定めた地方財政措置が適用されることもあるため、ぜひ確認してみてください。
AIチャットボット「おもてなしSuite」のご紹介
ChatGPTもチャットボットも優れたAIですが、より正確性が高い回答が必要とされる場合や想定外の質問が投げかけられたとき、その性能を十分に発揮しきれない場合があります。
そのようなケースが想定されるのであれば、AIの優秀性に人ならではのサービスをプラスすることに解決を見出すのもおすすめです。
AIチャットボット「おもてなしSuite」は、有人・AI両方に対応可能なチャットです。チャットボット、有人チャットの両方をシーンに応じて設定できるため、24時間高度なサービスが提供できます。
チャットボットが対応できない想定外の質問があれば、すぐに有人チャットに切り替えてリアルタイムの応答が可能に。LINEやLINE WORKS、Microsoft Teams、Slackなど多数のインターフェースで手軽に利用できるのも、ユーザーニーズに合わせやすいでしょう。
管理側の操作性も優れており、チャットボットのFAQの作成は自治体の皆さんが使い慣れているExcel表のみで作成できます。
また、多言語対応も可能で外国の方への案内に課題を感じている方にもおすすめです。
AIの導入・活用をお考えなら、ぜひ「おもてなしSuite」をご検討ください。